第27回VR技術者認定試験講習会を受けてきました.
作成日時: 2025/11/8

はじめに
現在12月6日に開催される第27回VR技術者認定試験(アプリケーションコース)を受験する予定です.今回はこの受験の前段階の学習として講習会が開催されたため,参加してきました.
これまでVRコンテンツやXRは趣味としてのみでたしなんできましたが,今年度からは研究室にてXR関連の研究を扱えることになったため,現在は論文輪講という形で学術的なXR技術について学んでいます.
当日の流れ
講習会はオンラインで開催され,各講義90分の講義が四回開催されました.アプリケーションコースの講義内容は「バーチャルリアリティ学」第5章~9章,また第27回から新たにバーチャルリアリティ学ライブラリから「ヘッドマウントディスプレイ」,「神経刺激インタフェース」からも一部内容が扱われました.
講義タイムテーブル
| 時限 | テーマ |
|---|---|
| 1 | リアルとバーチャルの融合(複合現実感) |
| 2 | テレイグジスタンスと臨場感コミュニケーション |
| 3 | VRコンテンツ |
| 4 | VRと社会 |
各コースのふりかえり
1.複合現実感
このセクションではMRの定義から,VR,AR技術の細かな手法の進化の歴史を学びました.特に印象に残ったのは「レジストレーション(現実世界と仮想世界の位置合わせ)」の多様な手法です.
趣味で使っているMeta Quest 3は,「ビデオパススルー」方式を採用しており,従来のホロレンズのような「光学透過型」とは明確に仕組みが異なる点を,実際の講義内容や比較によって改めて理解できました.
また,他のARデバイスも投影方式や空間演出の手法がそれぞれ独自に進化していることも知ることができ,MR(複合現実)の垣根がどんどん広がっている実感を持てました.
自分はXR系の研究室に所属しているので,来年からの卒業研究でもMR(複合現実)関連のテーマにぜひ挑戦したいという気持ちが強くなりました.今後の研究室内論文輪講でも「レジストレーション」に関する最新研究を積極的に取り上げて知見を深めていきたいです.
2.テレイグジスタンスと臨場感コミュニケーション
このセクションでは**テレイグジスタンス(遠隔存在拡張技術)**について学びました.主に,テレイグジスタンスの定義や,臨場感・存在感を生み出すための技術的なアプローチ,そしてその歴史・産業応用例について体系的に理解する内容でした.
私にとって「テレイグジスタンス」という単語自体が初耳だったので,この語彙を知ること自体がとても印象的でした.セッションでは,原子炉事故対策などで使われてきた初期のハードウェア的テレイグジスタンス技術の話も出てきましたが,私はその分野については今まで全く縁がありませんでした.
一方で,日常的にVRChatなどのメタバース空間を利用しており,そこで友人と作業したり会話したりできる体験が,まさに「人間VPN」だと感じています.どこにいても実際に同じ空間で会っているように感じられる――この感覚を生み出す技術が,まさにテレイグジスタンスの本質なのだろうと思いました.
また,研究室の論文輪講でアバターの身体的所有感(Body Ownership)に関する論文に触れたことがあったので,今回改めてその分野について調べてみたいというモチベーションも湧きました.
メタバースとテレイグジスタンスの接点や,身体所有感や存在感に関する技術と体験のつながりは,今後自分の研究・関心分野としてもとても面白いテーマだと感じました.
3.VRコンテンツ
このセクションでは「VRコンテンツ」ということで,VRコンテンツの産業・教育・医療分野での具体的な活用事例と,それを支える技術について学びました.
VRといえばエンタメやメタバース(VRChat)といった娯楽用途が思い浮かびがちですが,この講義を通じて,伝統文化のデジタルアーカイブや医療トレーニング,工場現場の技術習得支援など,社会課題の解決や産業現場でも多岐にわたり活用されていることを知ることができました.特に,現実の再現だけでなく「新たな体験の創出」や「知識・技術の伝承」という観点でVRが活躍している事例は印象的でした.
自分自身もVRChatなど娯楽目的の体験が多かったですが,こうした産業VRの多様な応用を学んだことで,将来のキャリアプランについて新しい知見が増えたと感じています.これまで単に「人の役に立つソフトウェア開発」といった軸で就職活動を進めてきましたが,産業VRというものを見たことで,ソフトウェア開発とXR分野の両面を持った開発ができる仕事があったら自分にとっても,好きなことができる幸せなキャリアプランの一つになるのではないかなと感じました.今後はCSの知識とXR技術を活かし,社会に貢献できるシステムやサービスに挑戦してみたいという思いが強くなりました.
4.VRと社会
このセクションではVR・XR技術が社会および人間に与える影響と、その評価方法・倫理的配慮について学びました.
特に印象的だったのは,「XR関連の実験を行う際に気を付けるべき倫理や安全性,心理物理学的測定方法のバイアス対策」です.
自身も研究室で論文輪講をしていて,様々な論文で主観的な評価の定量化が行われているのを目にしたことがあります.
こうした分野ではどうしてもバイアスが入りやすく,調査設計や評価方法への工夫が必要だと改めて感じました.
また,次世代インタフェースの人体への影響や,非侵襲的な刺激デバイス利用での安全性確保,倫理審査の重要性についても取り上げられていて,今後自分が研究を進めていく上でも非常に役立つ内容でした.
総評
今回の講習会を通して,これまで趣味中心だったXR(VR/AR/MR)への関わり方が,学術的・社会的インパクトを意識した「研究対象」として明確に再定義されました.複合現実感やテレイグジスタンス,存在感・身体所有感,産業VR応用,倫理的評価といった幅広いテーマに触れたことで,自身の研究活動の方向性・キャリアの選択肢・将来挑戦したい領域が具体化し,視野が大きく広がったと感じています.
学業や就職活動などでやるべきこと見失いつつありますが,まず来月に控えるは認定試験合格に向けて尽力します...!