XR-Kaigi 2025に参戦してきました!!!
作成日時: 2025/12/3
はじめに
12/1~12/3の三日間,東京竹芝で開催されたXR Kaigi 2025に参加してきました.
二年ほど前からVRをはじめとしたXRコンテンツに興味を持って以来,この催しの存在は知っていました.こうしたイベントにハードルを感じ,これまでまでは申し込めずにいました.今回参加を決意したきっかけは三つあります.
一つ目は,長期休暇中のインターンシップでお世話になったGMOペパボ様が毎年プラチナスポンサーとして参加されており,インターン期間中に良くしていただいたメタバース推進室のパートナーさんが登壇されることを知ったこと.
二つ目は,インターン期間中に大阪で開催された姉妹イベント「XR Kaigi Hub」の出展のお話を聞き,本開催への興味が高まったこと.
三つ目は,大学入学後から現在まで同じXR系研究室に在籍している友人がXRライブに興味を抱いており,一緒に参加できたことです.
当日はエキスポでSharpの新型VR,XREALの新型ARグラス,Galaxy XRといった発表後間もない最新XRデバイスに触れることができました.また,セッションでは企業のXR活用事例やモノづくりそのものの考え方について学ぶことができました.
この記事では,XR Kaigi 2025を通じて得られた学びと感想を振り返っていきます.
当日の流れ
XR-kaigiには12/2と12/3の二日間で参加しました.初日はペパボのセッションがトップバッターで入っているため,開場時刻の午前10:00到着を目標に会場を目指しました.竹芝は,サークルの合宿で利用したフェリーの乗船などで何度かきたことがあったため,問題ないだろうと思っていましたが,見事に迷子になりました...!
浜松町駅から会場がある貿易センタービルまでは1km程度であるということを事前に確認していたため,友人と二人で意気揚々と歩き始めましたが,会場とは真逆の方向に歩き始めるところから一日が始まりました(田舎ものは都会をなめてはいけませんね...).
何とか会場に到着した後は,第一セッションが始まる前の時間でエキスポ会場を散策しました.今回Sharpさんの新型VRグラス「Xrostellia VR1」が体験できるということで,混雑を避け一番最初に向かいました.
体験を終えるとすぐにセッションが開始される時刻となったため,以後は連続してセッションの聴講を行いました.
当日参加したセッションは下記のとおりです.
day2:
day3:
- 「VRChat × 伝統文化を活用したシティプロモーション」
- 「企業のVRChat展開について,VRChatとBOOTHに聞いてみた」
セッションの振り返り
エキスポでの企業展示・参加したセッションの中でとくに印象に残ったことについて振り返ろうと思います.
VRChatのビジネス・自治体活用について

このセッションは,GMOペパボのメタバース推進室・濱田さんとVRChat Inc.の北庄司さんによる対談形式で,2024年末のパートナーシップ締結に至る経緯とペパボのVRChat活用事例が紹介されました.
VRChat活用に至る背景
ペパボのメタバース事業参入は,時代に合わせたインターネット上のアウトプット文化の変化への対応から始まったそうです.Alive,Lolipop,即レスAIといった既存事業に続く新しい領域として,メタバース・XRに着目.特に興味深かったのは,起案が社長自らだったという点です.新規事業コンペで提案されたメタバース事業が社長賞を受賞し,社長直轄の組織としてメタバース推進室が立ち上がったとのこと.
なぜVRChatを選んだのかという問いに対しては,「VRChat内のクリエイターコミュニティの熱量とその市場性」を挙げていました.コンテンツが溢れる現代において,VRChatというプラットフォームにおける可処分時間(滞在時間)の長さに着目したのは,ビジネス視点として非常に鋭い着眼点だと感じました.
ペパボのVRChat活用事例
具体的な取り組みとして,以下のような実績が紹介されました:
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Nagisaを使ったカジュアル採用面談(2025年1月29日実施)
- 70件を超える応募があり,26卒を1名採用
- 従来の採用手法とは一線を画す試み
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新卒会社説明会 in VRChat
- 過去には社長がゾンビになるなど,型破りな演出
- 「とんでもない会社」という自虐ネタも交えつつ,VRならではの自由な表現を活用
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VRC全校集会
- 「校長が夏休みに買ったバイクを生徒に自慢する話」など,インターネット黎明期のような緩いコミュニケーション
- 堅苦しくない雰囲気での情報発信
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ネオ日置プロジェクト
- 鹿児島県日置市との地域連携プロジェクト
- 伝統芸能継承という地域課題に対するVRCでのアプローチ
- 2026年1月公開予定で,当日のブースでも展示されていました
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VRChatグッズデザインコンテスト
- こちらは私の記憶にも新しいVRCならではのデザイングッズコンテスト
- VRCとのタイアップでSUZURIでのリアルグッズ販売もあり
- 審査員には某ワーミーさんも!?
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その他オリジナルアバター墨澄(スミスミ)のVR集会Sumi3Djなど
所感
GMOペパボのメタバース推進室については,インターンシップ中にパートナーの方と趣味のVRの話をさせていただいたり,SUZURIでのデジタルコンテンツ(3Dモデル)実装のお話を聞かせてもらったりと,とても良くしていただきました.しかし,インターンで直接携わったSUZURI以外の事業部について詳しく知る機会は限られていたため,メタバース推進室の具体的な活動内容を知れたのは大きな収穫でした.
国内でVRChatとパートナーシップ契約を結んでいる企業はまだ少ない中,いち早く契約を結び,採用活動から地域創生まで幅広い領域で実績を積み重ねているのは,本当にぶっ飛んでいる(良い意味で)と感じました.特に印象的だったのは,社長自らが起案し,社長直轄組織として推進しているという点.トップダウンの強い意志があるからこそ,こうした先進的な取り組みが実現できているのだと思います.
200万人が来場するVRChatワールドの作り方

このセッションは,VRChatユーザーなら誰もが知るワールド「NAGiSA」と「ひまり旅館」を制作した株式会社ナギサコネクト代表でVTuberの丸山一沙(エンジンかずみ)さんによる講演でした.北海道大学大学院で工学を学び,大手メーカーでエンジニアとして働いていた経歴を持つかずみさんが,どのように人気ワールドを生み出したのか,その設計思想と運営のコツが語られました.
NAGiSA誕生の背景 - ユーザーのニーズから生まれた設計
NAGiSAは「コミュニティの需要」と「集団への参入障壁」という相反する課題を解決するために生まれました.VRChatでは多くの人がコミュニケーションを求めている一方で,既存のコミュニティに参加するのは心理的ハードルが高いという問題がありました.
この課題に対してNAGiSAが提供したのは:
- 自動マッチング機能:話しかけに行く障壁を撤廃
- 1on1の対話:コミュニティへの参入障壁を解消
- 5分のルーティン:手軽さの実現
ターゲットを「コミュニケーションを求める層」に絞り,既存ワールドでは代替できない「体験」を提供することで,クリティカルな悩みを解決するというプロデュース方針が明確でした.
運用から見えた課題と改善
実際にリリース後,かずみさん自身もユーザーとして当事者の立場に立つことで,新たな課題が見えてきたそうです.
5分では親しくなれない という声を受けて延長ボタンを実装.しかし,延長への心理的障壁も存在していました.そこで生まれたのが「ひまり旅館」です.

ひまり旅館の革新性:
- 掲示板形式の個室:初めから趣味が合う集団としての話題形成が容易
- 部屋建て・内装のカスタマイズ:イベント会場としてのハードル低減
- 日本語文字入力の新システム:長期利用時の負荷軽減を実証
結果として,NAGiSAとひまり旅館は共にVRC歴代最大の伸びを記録.現在では日本人向けチュートリアルに常に掲載され,多くのユーザーで賑わう定番ワールドとなっています.
VRならではの価値を付加する - 北大再現ワールドの事例
興味深かったのは,北海道大学の再現ワールドに関する考察です.一般的に再現ワールドは再現元を知っている人や地元の人にしか刺さらないという課題がありますが,かずみさんは「小さくてもVRならではの体験価値を付加する」ことで解決しました.
具体的には:
- 入試問題の体験
- 実在するオブジェクトとの比較表示
- VRならではの移動速度体験
これらの考え方は現在の「Nice Handa」(はんだごて工学教材)にも活かされています.教科書や旧式の教材では体験できない立体視やゲーミフィケーションを付加することで,工学分野での教育に新しい価値を提供しています.
所感
NAGiSAにしろひまり旅館にしろ,また工学系のはんだごてXR教材にしろ,どれもVRの現状をよく見たうえで,まだ他の誰もやっていなかったけど,すごくほしい集いの場を作っていることに感動しました.
VTuberとしてインタビューをしたり,自身でもVRChatをプレイすることから実際のユーザーのニーズを把握している.そしてそれを,クリエイターとして形にし,エンジニアとして実装し,ビジネスマンとしてマネタイズする.この三つの視点を持ち合わせているからこそ,これだけの成功を収められたのだと思います.
セッション中,某大手配信者の襲来(通称「スタンミショック」)によってNAGiSAが日本で大ブレイクしたエピソードも語られましたが,そもそもバズる土台となる優れたコンテンツがあってこそのブレイクだったと感じました.
VRChat × 伝統文化を活用したシティプロモーション
このセッションは,GMOペパボのメタバース推進室・濱田璃空さん,鹿児島県日置市のネオ日置担当・重水憲朗さん,島根県江津市の創造力特区デザイナー・福山賢一さんによる対談形式で行われました.鹿児島県日置市と島根県江津市がそれぞれVRChatを活用して伝統文化を発信している事例が紹介され,地方自治体がメタバースに取り組む意義と課題について議論されました.
鹿児島県日置市 - ネオ日置プロジェクト
日置市は鹿児島県の薩摩半島西部に位置する人口約4.5万人の「戦国島津の町」です.400年以上の歴史を持つ「妙円寺参り」という伝統行事があり,地域の歴史と文化が色濃く残る素敵な町です.
ネオ日置プロジェクトの背景
日置市出身で東京在住の重水さんは,「物理的に離れている東京からはなかなか帰れない」という切実な課題を抱えていました.そこで生まれたのが「すぐそこにあるふるさと」というコンセプトです.
薩摩武士の経典「日新公いろは歌」にある
「いにしへの道を聞きいても唱えても我が行ひに せずばかひなし(良い情報を得ても動かないと意味がない)」
という教えのもと,薩摩武士の「動く=挑戦」を大切にする魂を継承するべく,より豊かなコミュニケーションを実現するために,VRChatへの展開を決断したそうです.
プロジェクトの目的:
- 疑似帰省体験の提供:物理的に帰省できない人々へ
- 関係人口の創出:日置市を知らない人にも興味を持ってもらう
- 伝統文化の継承支援:若い世代への文化の伝達
2026年1月公開予定で,当日のエキスポブースでも展示されていました.完成を楽しみにしています...!
島根県江津市 - 石見神楽プロジェクト
江津(ごうつ)市では,地域の伝統芸能「石見神楽」のVRChat展開を進めています.プロジェクトの詳細はこちら
過去には一人飲酒旅でおなじみ敷嶋テトラさんとのタイアップ動画も.
石見神楽が抱える課題
興味深かったのは,江津市の場合,継承者不足には困っていないという点です.地元では愛され,後継者も育っています.本当の課題は東京との物理的距離でした.
出張公演のコスト問題:
- 東京から江津市までは日本で最も遠い距離の一つ
- 出張費は1回につき130万円
- 近隣地域でしか公演できず,回数も限定的
このように,場所と回数の制約がある伝統芸能こそ,まさにメタバースで取り組むべき分野だという結論に至りました.
VRChatを選んだ理由:
- デジタルアーカイブとの相性の良さ
- Clusterと比較した際の海外ユーザーの多さ
- 既存の成熟したプラットフォームとしての安定性
また,BOOTHで無料配布されている石見神楽の衣装も話題になり,VRChat内で誰でも神楽を体験できる仕組みを整えています.この衣装はなんとVketではおなじみ超ハイクオリティなアバターたちを手掛ける大丸松坂屋によって作成されています...!
トークセッション - 自治体メタバースの実現と課題
セッション後半では,3者によるトークセッションが行われ,自治体がメタバース事業を推進する際の課題と工夫が語られました.
Q: どうやって行政で企画を通したのか?
江津市の場合:
- 大丸松坂屋というネームバリューを活用
- 「新しい世代へのアプローチでパイを増やす」という提案
- 既存の観客を奪うのではなく,新しい市場を開拓する戦略
日置市の場合:
- 「チャレンジするぞ!」というトップのコミット
- クラウドファンディングで「走りながら考える」スタイル
- 議会からは厳しい意見もあったが,成果で示すことを重視
- **「やらない人を黙らせる手段はやらせること」**という名言も
Q: これから継続していくためには?
両市とも共通して挙げたのは:
- 継続したコミュニティづくり
- 資金の確保
所感
日置の重水さんの話を聞いていると,伝統芸能の素晴らしさと,それを残していこうという熱意がひしひしと伝わってきました.先祖代々受け継がれてきた歴史は,Unixやソフトウェアの進化の歴史よりもずっと長く,その文化自体の価値と継承への思いを,あの熱量で語られると本当に心を打たれます.
XRをかじっている人間としても,単に自分が楽しいと思えるコンテンツを作るだけでなく,デジタルアーカイブのような形でXRならではの価値を付加して,こういった伝統文化を支えられるようになりたいと強く感じました.
130万円の出張費という具体的な数字を聞いて,改めてメタバースの持つ可能性を実感しました.物理的な制約を超えて,誰もが伝統文化に触れられる.そして,その体験をきっかけに実際に現地を訪れる人も増える.こうした好循環を生み出せるのがイマーシブソーシャルメディアの力なのだと思います.
エキスポのふりかえり
ここまでかなり長く書いてきたためテンポよくいきます.
Xreal
エキスポ展示で一番印象に残っているのはXR-kaigi初日に発表されたXreal 1Sの実機体験です!
今回のXrealブースでは,Sanrio Vfesや初音ミク夜空プログラムで有名なGugenkaさんとのタイアップで行われていました.それに伴いブースに昨年の夜空プロジェクトのミクさんのパネルの展示も行われており,私が体験した機能の紹介ではミクさんの生ARライブが!
肝心の体験はどうだったのかというと,前作同様Xreal Eyeと組み合わせた6DoF環境と,鮮明なディスプレイにより,映画鑑賞や外出時の軽作業だけでなく,コーディングのようなかなり細かい識字が必要な場面でもかなり実用できるレベルなのではないかと感じました.また,今作からの新機能である,2D映像に奥域を動的に生成する機能では,表示するコンテンツによって多少の差異はあるように感じたものの,映画鑑賞などの用途ではダイナミックな体験を得ることが出来るため,かなり面白いものだと感じました.また,グラス単体で実現するVRM表示も今後のコンテンツ発展に大きな期待を感じました.
そして何よりも! 今回の発表で最も私の興味を引いたのはSDKでの6DoF解禁です.Xrealが提供するSDK3.1.0にて6DoF空間固定,ハンドトラッキングが公開されました.
これまでのような平面上に表示する独自機能の開発にとどまらず,6DoF空間を使ったコンテンツの開発もできるようになってしまうとなると,さすがに購入せざるを得ません!!! ウェアラブルデバイスという意味では,最近日本でも購入できることが決まったEven G2に強い興味を持っていましたが,今回体験したXreal 1Sの体験とその圧倒的コスパを考えると,Quest3の時と同様のワクワク感を持っています!
Sharp
Sharpブースのお目当ては新型軽量HDM「Xrostella VR1」の体験です.「VR=重いを過去にする」というキャッチコピーのもとなされた180gという重量は確かに軽く,手に持った時には驚きました.発表当時に気になっていた水平視野角90°という昨今のHMDと比べるとかなり狭い視野角でしたが,いざ体験してみるとあまり気にならず,ハードウェアベースでIPDを調整できたことから周辺視野がぼやけることもなく適応できたように感じます.
反面,今回軽量化のために,インサートレンズが入るスペースやバッテリーまでもが削減されたデザインによる使いにくさも感じました.HMD本体である程度の視度調整機能を持っているものの,私のような強度の乱視を患っているVRユーザーとしては,インサートレンズ装着や,眼鏡をつけての利用が出来ないという問題はかなり致命的なものでした.また,重量自体は軽いものの,やはりウェイトバランスに関しては気になるところがあり,後頭部のバンドを装着した場合であっても長時間の仕様では前面部に圧迫感を感じるところがありました.
とはいえ,開発者の方々のお話を聞いていると,これまで誰もやっていないモノを作ってみるという熱量が伝わってきました.また,コンシューマ向けだけでなく法人向けでの検証も並行して進めているとのことで,産業MR分野での発展にも大きな期待が持てます.
国産XRデバイスの挑戦として,今後の進化を楽しみにしています.
その他
他にもpalanさんのブースでのGalaxy XRの体験,Diver-XさんのContactGlove2,MOOVさんのマーカーレスモーショントラッキング技術などを体験しました.また,前述したGMOペパボさんのネオ日置,Vketなどでも見かけていたキヤノンEOS VRシステムで撮影されたフォトグラメトリなど,ビジネスとして活用されているXRコンテンツについてもお話を聞くことが出来ました.
最新のXRデバイスから産業XRの活用事例まで,企業の方々から直接お話を伺える貴重な機会となりました.エキスポ会場では,技術の最前線に触れるだけでなく,それぞれの企業が描くXRの未来像を感じることができ,非常に刺激的な体験でした.
おわりに
初めて参加したXR Kaigi 2025は,想像以上に学びと刺激に満ちた二日間でした.
企業のビジネス活用事例から,クリエイターの設計思想,地方自治体の挑戦まで,XRが単なる娯楽の枠を超えて社会に実装され始めている現実を目の当たりにしました.特に,どの登壇者も「XRならではの価値」を追求しており,既存の手段の代替ではなく,XRでしか実現できない体験を創造しようとする姿勢に,この分野の可能性を感じました.
来年もまた参加したいと思います.次回はより深く技術的な知見を得られるよう,自分自身もXR周りの知識や開発スキルを磨いていきたいです!